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第4章 アナスタシアの鞭
博士に続いてその後ろから一人の女が部屋に入ってきた。
女はテロリストの仲間の一人に違いないが、その風貌は女子プロレスラーのようにいかつく、極端に肌を露出した独特なコスチュ
ームはまるでSMショーの女王かなにかを想起させる場違いなものであった。

元々大柄な女性ではあったが、博士が小柄な体形だけに妙に馬鹿でかく見え、それだけで威嚇効果は十分であった。
ダウシェン博士は後ろ手縛りのまま部屋の片隅に跪くように座らせられ、その背後からは兵士の銃が突きつけられた。
一通り準備が整うと、ノーバディギルは博士に向かって言った。
「ダウシェン博士。こんな夜分遅くお呼び立てして申し訳ないが、今から面白いものをお見せしようと思いましてね。」
そう言われたダウシェン博士はかなり緊張しているようで、無反応であった。
「ここに吊られている女はあなたを救出に来た特殊工作員のようです。その結果は、まぁ見てのとおり失敗に終わった。」
麗亜はじっと博士の表情をうかがい続けた。

「もしあなたが救助を期待して我々の協力要請を拒んでおられるとしたら、その希望は残念ながら消え去ったというわけですな。
あははははは・・・。そろそろ観念して我々の計画にご協力をいただけませんかね?」
言葉遣いこそ丁寧だったが、その威圧感あるドスの聞いた声は脅迫以外のなにものでもなかった。
しかし博士もまた無言のまま目の前に吊るされた哀れな女の姿を無表情で見つめるだけだった。

そんな博士の態度にしびれを切らしたノーバディギルは大女に向かって言った。
「おい、アナスタシア。博士にこの女の苦しみもがく姿を見せつけてやれ!少しは恐ろしくなって気が変わるかも知れん。」
アナスタシアと呼ばれた大女はコクリと頷くと、適当な間合いを取って麗亜と対峙するように立ち、肩幅に両足を開き体勢を整えた。
そして腰に下げられた鞭の束をつかむと、バラッとほぐすように先端を床に垂らした。

床に広がった鞭は恐ろしく太い革製の一本鞭で、まるでサーカスの猛獣使いが使用するもののようだった。
それを見た麗亜は大いに慌てて、無駄と知りながらも全身を大きく揺すって手足の鎖を断ち切ろうと必死に暴れ回った。

ヒュッ、バシィイイイイイイーーーーーーッ!!!
そんな麗亜を気にも留めずアナスタシアの鞭が剥き出しの乳房を容赦なく襲った。
ぎゃぁっ!!

今の一撃で乳房がもぎ取られたのではないかと思うくらい、その鞭の想像を越えるインパクトに麗亜は驚愕して叫んだ。
ビシィーーーーーン!!!
うぁあああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁーーーー!!!!
鞭が正確に麗亜のもう片方の乳房に命中した。
アナスタシアは鞭の柄をあらためてしっかり握りなおし今一度足場を固めると、ダッと一歩踏み出して再び乳房を打ち据えた。
バシィーーーーーーーーーーン!!!!
あぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁああぁぁ!!!!

乾いた鞭の音が静まり返った拷問部屋の空気をビリビリと振るわせる。
ヒュッ、ビシィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!
バシィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーッ!!!!

アナスタシアの鞭は麗亜の乳房、腹、下腹部を順番に襲い続けた。
鞭の一撃ごとに、麗亜は体全体を吹き飛ばされるくらいの激しい衝撃を両手首・両足首の4点で受け止めなければならなかった。
既に乳房から下腹部にかけて無数の傷に埋め尽くされ、そこから滴り落ちる血が麗亜の足元の床をぬめぬめと光らせている。
う、うぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・・ 麗亜は激しいを懸命に堪えながら呻き続けた。
もう責めるところがなくなったと見たアナスタシアは今度は麗亜の背後に回り込み、再び足場を固めて狙いを定めた。

「強情な女め!おまえが情報を吐かない限り鞭打ちは終わらんぞ。」 ノーバディギルは再び麗亜への尋問を始めた。
「い・・・・や・・・・・・・絶対・・・・・・言わない・・・・・わっ・・・・・・」 苦痛に喘ぎながら麗亜はかろうじてそう答えた。
「仕方ない。おい、アナスタシア、特製鞭の本当の恐ろしさをたっぷり味合わせてやれ!」
アナスタシアはニタッと無気味な笑みを浮かべると、手にした鞭の柄の先をねじのように回転させはじめた。
すると長い鞭の表面の至るところから小さな無数の棘がニョキニョキと伸び出してきたが、もちろん後ろ向きの麗亜はそのような
ことに気づくはずもなかった。

アナスタシアはスタンスを決めると、鞭を大きく振りかぶる。そして空を切る恐ろしい音を立てながら鞭が力いっぱい振り下ろされた。
ヒュン、ビシィーーーーーン!!!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁああぁああぁぁぁぁ!!!!!
鞭が麗亜の背中に炸裂する。 麗亜はこれまで以上の激痛と衝撃に悲鳴を上げて大きく仰け反った。
(な、なに?!この痛み。さっきまでのとまったく違う!)

バシィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーッ!!!!
ヒュッ、ビシィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!
ぎゃぁあああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁーーーー!!!!
打たれるたびに麗亜の体にガッチリと喰い込む特製鞭の棘は、次の瞬間バリバリバリッと皮膚とともに肉をも削ぎとって行く。
その想像を絶する激しい痛みに、もはや麗亜は耐え切れず意識も朦朧とし始めていた。

バシィーーーーーーーーーーン!!!!
あぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁああぁぁ!!!!
麗亜の苦しみ悶える様子を脇目で見ながら、ノーバディギルが今度は博士に向かって荒々しく言った。
「ダウシェン博士。おまえの救援者がこんな目にあっても、なんとも感じないか?えっ!」
博士はただじっと鞭打たれる麗亜を見つめているだけだったが、その表情は徐々に険しさを増し、紅潮していくのがわかった。

アナスタシアの正確且つ非情な鞭は、麗亜の背中から尻、腿、腹と次々に標的を変えながらその都度新たな傷口を刻んでいった。
ヒュン、ビシィーーーーーン!!!
うっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 激痛と大量の出血で失神寸前の麗亜は、鞭打ちの反応すら鈍くなってきていた。

その時だった。
それまで始終無言だったダウシェン博士がおもむろに口を開いた。
「わ、わかった。協力する。だから、もうやめろ。」
その言葉にノーバディギルはアナスタシアを制止した。
ハァハァハァハァハァハァ・・・・・・麗亜は荒い息遣いをしながら、博士の突然の言葉に愕然として耳を傾けた。

「よし、よく言った博士。さすがに見るに忍びなくなったか。あはははははははははは・・・」
「いや、こんな見知らぬ女がどうなろうと、わしの知ったことではないが、血なまぐさいのは趣味に合わん。わしの目の届かない
ところで拷問でもなんでも好きにしろ。 それに、協力すると言ったのは、わし自身の研究を完成させたかったからじゃ。」
「ほほぉ、なるほどな。」
「は、博士・・・・・だめ・・・・・だめです!」 遠ざかる意識の中で、それでも麗亜はショックを隠し切れないという声で博士に訴えた。
「黙れ!」 ノーバディギルの鋭いパンチが麗亜の腹に飛んだ。
ゲホッ、ゲホゲホゲホッ!! 麗亜が激しく咳き込む。

「さすが研究者だ。自分の研究のためなら人命など二の次か。あはははははははは!いやぁ、実にご立派だ!」
「わしは、わしを蔑んだ学会の連中に目に物を見せてやりたいんじゃ。やつらを見返せるなら、誰とでも手を結ぶ。たとえそれが悪魔
でもな。」 ダウシェン博士は先ほどと人が変わったように雄弁に熱く語った。
「悪魔か、こいつぁいい、博士。あははははは・・・。だが我々が悪魔と違う唯一の点は、イデオロギーに基づき行動していることだ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。とにかく博士がご協力いただけるなら、我々は最善のお手伝いを致しますぜ。金も人も施設も。」
(だ、だめだったか・・・・・・) 麗亜は博士の心変わりに絶望すると、とたんに全身の支えが崩れ去るような気がして、そのまま意識
を失ってしまった。
博士の協力という大きな成果を得たノーバディギルは大いに満足し、博士を丁重に別室に案内させると、部屋に残った部下に言った。
「この女は牢に戻しておけ。少し体力が回復したら尋問再開だ。じっくり時間をかけてドロを吐かせてやる。ふふふふふふふ・・・・」
手枷足枷を解かれた麗亜の傷だらけの体は崩れるように床にドサッと倒れ込み、二三度痙攣するとそのまま動かなくなった。

※この物語はすべてフィクションであり、登場人物および団体は実在しないものであります。
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