第8章 冷酷な使者 原案者:甚兵衛様
ロングアイアン市警察本部の最上階にある長官室。
シティが一望できる大きな窓にはブラインドが降ろされ、その前で大柄な男が深刻そうな顔つきで携帯電話を耳に当てていた。
市警察長官グラス・バンカーは、くわえた葉巻から灰がデスクに落ちるのも気にせず、「すまん!」とだけ電話の向こうに言った。
「いったいいくらあんたのとこの役立たずどもにカネを使ってるかわっかてるのかい?!カネだけの問題じゃない。もしハザード卿の
所在が掴めないまま死刑執行なんてことになったら、あんた、市警察長官と言えども命はないよ!」
電話の向こうの声の主はアルバトロスの女幹部ブラッシーだった。
「我々も全力でHCPに探りを入れているが、あいつらのガードの固さときたら・・・。だ、だが・・・そうだ!いい手がある。聞いてくれ!」
グラス・バンカー長官は額にびっしょり脂汗をかきながら、長官室のドア越しに秘書の姿を見てとっさに苦肉の策を思いついた。
「こちらからプロの取調官を派遣する。そいつの尋問方法ときたらハンパじゃない。警官には警官をだ。どうだ?」
「わかったわ、その取調官とやらをすぐにこっちによこしな。だがわかってるだろうね。そいつがもし落とせなかったら、そん時は・・・・」
「わ、わかってる。大丈夫だ。信用してくれ!」
そう言ってグラス・バンカーは携帯を切りフゥ〜ッと深いため息を一つつくと、すぐに内線電話に手を伸ばした。
「ああ、そうだ。すぐに行くんだ。思う存分やって来い。相手はいまいましいHCPだから遠慮はいらん。頼んだぞ!」
街外れにあるショートカット公園。 噴水前のベンチに座る一人の男が街灯の青白い光に照らし出されていた。
そこへ近づく影が一つ。
「時間どおりだな。よし来るんだ。」 男は待ち人が到着するやすぐに立ち上がり、公園の外に停めてあった車へ足早に向かった。
「乗れ。」 指示されて男と一緒に後部座席に乗り込んだのは、真っ赤なロングコートに身を包み片手にアタッシュケースを握り締めた
スレンダーな東洋人女性であった。
「おい、着ている服を全部脱いでこいつに着替えるんだ。」 男はそう言うとあらかじめ準備していた服を女性に渡し、脱ぎ捨てられた
服を公園の茂みに捨てた。
「どうやら信じられてないみたいね。」 女性は言われるとおり新しい服に着替えたが、顔には露骨に不満を表していた。
「もちろんだ。いくら長官殿の部下でも100%信じちゃいねえ。発信機でも持ち込まれた日にゃ、俺たちボスにぶっ殺されちまうからな。
だがよ、どうだいその衣装。悪くねえだろ。中国人女にゃやっぱりチャイナドレスが似合うぜ。ヘヘヘヘヘ・・・」
さらに男は一枚の布を取り出し、「悪いが目的地に着くまで目隠しさせてもらうぜ。」と言いながら女性の顔に目隠しの布を巻くと、
運転手に車を出すよう命じた。
男たちはしばらく市内を縦横無尽に走り回り、途中何度も車を乗り換えると、やがてハイウェイに乗って南へと下っていった。
「ボギー・ペースってあんたの上司だね? 恐らく今頃はHCPの連中もろとも吹っ飛ばされてあの世の人になっちゃってるわ。」
「な、なに!い、いったい何をした?!」
キャリーはブラッシーの衝撃的な言葉に驚いて叫んだ。
椅子に縛りつけられた裸体は、これまでの連日連夜の過酷な拷問でズタズタにされ見るも無残な状態であったが、それでもキャリー
の強靭な精神は崩壊をかろうじて食い止めていた。
その精神を根底から揺るがせようと狙うブラッシーは言葉を続けた。
「前のアジトにのこのこ乗り込んだやつらは、そこであんたの拷問ビデオを鑑賞した後、時限爆弾でお陀仏ってわけさ。 これでもう
あんたが密かに期待している救助の手立ては断たれたわよ。だからどんなに頑張っても無駄ってこと。そろそろ観念するのね。」
「・・・・・・・・・・・・・・」 キャリーは唇を固く噛み、ブラッシーを怒りの眼差しで睨みつけることしかできなかった。
「そうそう、もう一ついいことを教えてあげるわ。あんたのために新しいカウンセラーを用意したの。紹介するわ。」
ブラッシーはそう言うと目で手下に合図を送った。
クリークに案内され部屋に入ってきたのは、紫のチャイナドレスに身を包んだどこかで見覚えのある顔の女性だった。
冷たく鋭い目つきに残忍そうな笑みを浮かべた口元。 (はっ!市警察本部でグラス・バンカー長官の秘書を勤める・・・・名前は
たしかニア、そうニア・ピン。かつて凄腕の取調官として名をはせた女性。しかしその行き過ぎた尋問方法はマスコミの非難の的
となり、その後担当をはずされたはず・・・・・・)
女性はキャリーの前に来て立ち止まり、頭の先から足の先までを舐めるように見回した。
「HCP隊長キャリー・フェアウェイ。私のことを知っているようね。だったら話は早いわ。あなたが知っている情報を私に教えてくれない?」
キャリーはニアに答える代わりに顔を横に向けた。
「ニア・ピン。あとはあんたに任せたよ。お手並みをとくと拝見させてもらうとするわ。」 ブラッシーはニアを挑発するように言うと、
部屋の片隅のソファーにドカッと腰を下ろした。
ブラッシーの手下どもがキャリーを縛った椅子の前に木製のデスクを運んできてドンと設置した。
「懐かしいわね。取調べ室を思い出すわ。」 ニアはそう言いながら携えてきたアタッシュケースをデスクの上に置いてカチッと開いた。
(な、なにが入っているの?)キャリーにはケースの中は見えなかったが、それだけに緊張と恐怖が一層心の中に大きく広がっていく。
ニアはおもむろにキャリーの左手のロープを解くと、グイッと前方に引き伸ばし、素早く手首をデスクの枷に固定した。
「あぅっ・・・・・」 キャリーはこの一瞬の早業に驚きながらも、しまった!という思いで小さな声をあげた。もはや左手はビクとも動かない。
「さあ、準備完了よ。もう一度聞くわ。ハザードの居場所を教えてくれない?」
「ふん、犯罪者とグルになる長官も長官なら、部下も部下よ。この恥知らず!」 キャリーは迫り来る恐怖を必死に抑え込みながら
ニアに向かって毒気づいた。
ニアはニタリと口元だけをかすかに動かすと、アタッシュケースの中からマイナスドライバーを1本取り出した。
そして無言でキャリーの人差し指を抑えると、もう一方の手でドライバーの先を爪の間に差し込み、じわじわとしかしグイグイと押し込ん
でいく。
「う、うぅぅぅぅ・・・・・」 苦痛にゆがむキャリーの顔。
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「ふふふ、とても痛いはずよ。指先は神経が集中しているからね。白状したくなったら意思表示してね。」
「だ、誰が・・・・・うううう・・・・・い、言うもんか・・・・」
ニアの手がドライバーの握りをグイと持ち上げる。ベリッと音がしてキャリーの生爪が剥ぎ取られた。
アグッ!!
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さらに無言のままニアは中指の爪も同じように剥がした。
必死に痛みを堪えるキャリーの額から玉のような汗が滲み出る。
続いて薬指、小指、そして親指の爪と、ニアは表情ひとつ変えず次々にキャリーの生爪を剥いでいった。
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「あうぅぅぅぅ・・・・・・く、くぅぅぅぅ・・・・・・・」 これまでの派手な責めとはまったく異なる凄まじく鋭利な痛みがキャリーを苦しめた。
それでも屈しないキャリーに、ニアは新たな器具をケースから取り出すと爪を失った左手の指をその器具で挟んだ。
親指を除く4本の指先が器具から飛び出して見える。
ニアがその器具の上に取りつけられた4本のネジを順繰りに締め上げていく。キャリーの口から発せられる唸り声が徐々に大きく
なっていった。
う、ぅぅぅぅぅぅ・・・・ぐぐぐぐぐぐ・・・・・・ああぁぁああぁぁ!!!
ネジが指に当たり、真下に押し込む仕掛けになっていたのである。
やがて バキンッ!!と高い音に続いて ギャアァァァアアァァアアァァアァァァーーーー!!!という悲鳴が起きる。
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「どう?他の指も折られたい?それがイヤなら吐くんだよ!」 ニアが残忍な目つきでキャリーに迫る。
汗と涙にまみれた顔を懸命に左右に振るキャリー。
キャリーの意思を察したニアは、淡々とキャリーの指を1本ずつへし折っていった。
バキッ!アグヮッ!! ボキッ!うぐぐぐ!! ベキッ!!グギャアァァァアァァァーー!!!!
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ソファーに腰掛けてこの様子を眺めていたさすがのブラッシーも、骨折の音が響くたびに眉をひそめた。
ハァハァハァハァ・・・・ 肩で荒い呼吸をしながらデスクにうつ伏せになるキャリーの血まみれの指先は、無残にも曲がりくねっていた。
「なるほど、噂に聞いてたとおり強情な女だわ。その様子じゃまだ降参する気はなさそうね。あなたがその気なら、まずは左手を徹底
的に責めてあげるわ。」 ニアは指をボロボロにされた状態で固定されたキャリーの左手の甲にケースから取り出した五寸釘を突き
立てた。
キャリーが恐怖と驚愕の眼差しで見つめるその先には、ハンマーを握り締めたニアの右手があった。
や、やめてぇーーーーーーっ!!!
あまりの恐怖に思わず叫んでしまったキャリーに、「じゃあ、言うんだね!」 とニアが迫る。
うぅ・・・・・・・ 言葉を詰まらせるキャリー。
躊躇することなくその手にハンマーが勢いよく振り下ろされた。
ゴツッ!! ギャアアァァァアァァァァァァァアアアァァァァァァァーーーー!!!!!
鈍い音が響き、キャリーの手のひらを一気に刺し貫いた五寸釘は下のデスクにまで突き刺さった。
「地獄はこれからだよ。覚悟しな!」
ニアは何度も何度も繰り返しハンマーで釘の頭を打ち込む。
その都度キャリーのあげる獣のような絶叫とともに、釘は深々とデスクにもぐっていった。
ゴンッ!ヒィィィ!! ゴンッ!ギャァァァ!! ゴンッ!!ぐわぁぁあぁぁぁああぁーーっ!!!!
「仕上げはこいつだよ!」
失神寸前のキャリーを再び目覚めさせたのは、釘で貫かれた手の甲に垂らされた熱蝋の滴りであった。
キャアアァァァ!!ヒィィィィィ!!! アギャァァァァアァァァーーー!!!
一際大きな絶叫が拷問室に響き渡ると、キャリーは白目を剥いて卒倒してしまった。
それを見ていたブラッシーはおもむろにソファーから立ち上がり、「よーし、今夜はここまでだ。明日は必ず落とすんだよ!」 と
ハンマーを持ったまま立ち尽くすニアに向かって言うと、手下の男どもを引き連れ部屋から立ち去っていった。
バターーーン!ガチャガチャ・・・・地下室の扉が閉められ、外から施錠する音が聞こえた。
暗い部屋には、手の甲に釘を深々と打ち込まれたまま気を失って机に突っ伏すキャリーとそれを見つめるニアの二人が残された。
どうなるキャリー! この続きは皆様次第!!
※この物語はすべてフィクションであり、登場人物および団体は実在しないものであります。