第5幕 褐色の戦士
国王ギガリアー専用の拷問部屋に引き出されたセルケトは、ギガリアーの顔を怒りに燃えた目で思いっきり睨みつけた。
その怒りの目は、国を滅ぼされ、女王と仲間をなぶりものにされた恨み、憤りを明確に物語っていた。

ギガリアーは、アマネニア一の格闘士と称される褐色の戦士を好奇の目でながめ、その気迫に思わず身震いした。
「ふむふむ、なるほど噂どおりの素晴らしい体じゃ。もっとよくその鍛え抜かれた体を見せてもらおう。オイ、この女を吊るせ!」
兵士たちがセルケトの両手にかけられた鎖をはずし、天井から吊り下げられた手枷にその手をつなぎ変えようとしたその時、
一瞬の隙をついてセルケトは兵士たちの手をすり抜け、サッと身を翻して格闘の構えを取った。

慌ててセルケトを取り押さえようとした一人の兵士の顔面にセルケトの強烈なパンチが命中し、その頭蓋を微塵に打ち砕いた。
ギャアッ!! という短い悲鳴とともに血飛沫をあげながら兵士が倒れた。
すかさずセルケトは拳を振りかざしギガリアーに突進した。

セルケトが猛スピードで繰り出した拳はギガリアーの鼻先でピタッと止まった。
とっさに兵士が放った鎖がセルケトの首に巻きつき、力いっぱい後ろから引っ張られたからである。

その鎖の引きに、セルケトは背中からドォッと床に倒れ込む。そこを大勢の兵士たちに取り押さえられ、もはや身動きすらできなく
なってしまった。「ちくしょぉーーーーっ!!」セルケトの無念の叫びが響く。
ギガリアーはたった今目の前で起きた一瞬の出来事態にしばし呆然とし、両足はガクガクと小刻みに震え、股間から一筋の液体が
音もなく流れ出た。驚愕のあまりに失禁してしまったのである。

しばらくして、ブルッと首を振って我を取り戻したギガリアーの青ざめた顔は、見る見る真っ赤な激怒の表情に変わった。
「お、おのれーーー!よくも余に恥をかかせてくれたな!おまえにはたっぷり地獄を味合わせてやる。覚悟しろ!」
兵士たちは今度こそぬかりなくセルケトの両手を手枷につなぎ、素早く天井から鎖で吊るし上げた。
「く、くそっ!放せ!放せーーっ!」なおも暴れまわるセルケトをまるで獰猛な獣でも見るように、恐る恐る眺める兵士たち。

ギガリアーは兵士に何やら事細かに指示を与えた。
一旦セルケトの前から下がり、再び姿を現した兵士が手にしていたもの。それは鋭い刺を無数に生やした棘の蔓であった。
「やれ!」というギガリアーの命令で、兵士たちはセルケトの衣服を剥ぎ取り上半身を剥き出しにすると、棘の蔓をギリギリとその体中
に弛みなく巻きつけ始めた。
「うっ、うぅぅぅぅ・・・・・」 棘の刺がセルケトの褐色の素肌をそこここと刺し貫く。

天井から吊るされた手から胸、胴、腰に至るまでギッチリ棘の蔓できつく巻きつけられたセルケトの体は、さながら巨大な蓑虫
のようであった。
鉄の手袋をはめた兵士はセルケトの前髪を摑み上げると、棘の蔓を額に巻き、さらに痛みに喘ぐセルケトの口を無理矢理こじ開け
ると蔓を猿轡のように噛ませ頭の後ろに固定し作業を終えた。
「くぅぅ・・・」 体中を激しい痛みで覆われ、しかも口に棘を噛まされてはさすがのセルケトもただ呻き声を出すしかなかった。
「あはははは・・・・獰猛な野獣は縛り上げるのが一番じゃ。ほれ、悔しいか?悔しかったら刃向かって見るがいい。あはははは・・・」
ギガリアーはセルケトの体のまわりをゆっくりと歩き回りながら言った。

そこへ元アマネニア王室の侍従長であった裏切り者のペイトーネも加わり、セルケトの無念の表情を楽しみながら言った。
「セルケト。あなたには鎧兜より棘の蔓の方がお似合いね。おほほほほほほほほ・・・・。そもそも異国の捕虜の分際で女王の側近に
取り立てられていること自体、私は気に食わなかったんだ。今日は鬱憤を晴らさせてもらうよ。」

「く、くそぉ・・・この売国奴!好きにするがいい。アレシア女王に捧げたこの命。何をされようが決して屈したりしない!」
口の棘を噛みながらも気丈に叫ぶセルケト。
セルケトの乳房をいたぶろうと手を伸ばしたペイトーネの指先に棘の刺がチクッと刺さる。
「痛いっ!!」慌てて手を引っ込めたペイトーネの指先には小さな赤い点が滲んでいた。
「あはははははは!」 この女二人のやりとりを見ていたギガリアーは笑いながらセルケトに言った。
「おまえはアマネニア最強の格闘士と聞いておるぞ。格闘士なら格闘士らしく、この者たちと戦うがよい。とくとアマゾン戦士の戦い
ぶりを見させてもらおうではないか。」
その言葉にどこからともなく現れたのは、たくましい体つきの2人の格闘士であった。
彼らは手に厚手のグローブをはめ、セルケトを前後から挟むようにして立つと、拳闘のポーズで身構えた。
それを見たセルケトの顔にはじめて恐怖の色が浮かんだ。

「この者どもはザーニガン最強の格闘士たちじゃ。単に強さだけでなく、残酷さもこいつらの右に出るものはおらぬ。
さあ、試合開始じゃ。遠慮はいらぬぞ。このメスの猛獣を徹底的に叩きのめせ!」ギガリアーが格闘士たちに命令する。
ビューン、ドスッ! バスッ! 前後から2人の格闘士の強烈なパンチが発せられ、セルケトの体を交互に打ちのめしはじめた。
あぁぁぁぁ!! グギャァアァァッ!! セルケトは悲鳴を上げながら、少しでもパンチを避けようと身をよじった。

ビュッ・・・・・ドスッ!! バチィィィィィィィーーーン!!!
格闘士たちは軽い足さばきで立ち位置を次々と変えては、四方八方からセルケトの体に襲い続かかる。
その繰り出されるパンチは正確にセルケトのボディに命中する。
“試合”とは名ばかりで、避けるに避けられないセルケトの無抵抗の体はただひたすら一方的な攻撃を受けるしかなかった。
ギャアァァァァアアァァァァーーーーッ!!!
パンチの威力だけでももの凄い衝撃だったが、さらに棘の刺がセルケトの皮膚を破り肉を切り裂く。

見る見るセルケトの体は全身血まみれになり、パンチを浴びるたびに血を飛び散らせながら前後左右に激しく揺れ動いた。
「どうした、アマネニア一の格闘士よ。もう降参か?はははは・・・口ほどもない。」この卑劣な拳闘を楽しみながらギガリアーが言う。

ドスッ!!ガツーーン!!バスッ!
グァァアァァァァァァァァアーーーッ!!!
「う、ぅぅぅ・・・まだまだ・・・・負けないわっ!!」 全身を真っ赤に染め口から血を吐きながらセルケトはギガリアーを睨みつける。
ビューーン、ドスッ! バスッ! ドスッ!!バシッ!!ガシーーン!ボグッ!ガッ!!
強烈なパンチがセルケトの顔面に炸裂する。背中を叩き割る。豊満な胸をブチのめす。そして腹部にめり込む。
グエッ!ゲゲゲボゲボーーー!!
内臓にダメージを受けたセルケトは、ゴボッと大きな血の塊を吐き出すと、ガクッと首をうなだれた。

その様子にギガリアーは格闘士たちを制止させ、セルケトに近寄るとその顎をグイッと自分の目の前に持ち上げた。
「許しを請う気になったか? ならば、アマネニアの財宝について知っていることをすべて話すんだ。どうだ?!」
「ハァハァハァハァ・・・・・い、いやだ。誰が貴様などに・・・・・」 セルケトはなおも血を吐きながらそう答えた。

「そうか。では仕方ない。オイ、続けろ!」 ギガリアーは格闘士たちに再び命じる。
ビューーン、ドスッ! バスッ! グギャァアァァッ!!
パンチの猛攻が開始された。 セルケトの体は破壊的な威力の猛打とともにズタズタに切り裂かれていった。

ギガリアーは暫しこの凄惨な光景を恍惚の表情で見つめていたが、思いついたように傍らの兵士を呼び寄せると言った。
「もう一人捕虜がいたな。そいつもここへ連れて来い。」

※この物語はすべてフィクションであり、登場人物および団体、地域、国家は実在しないものであります。